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「自分は死なないと思っているヒトへ」 [本]

自分は死なないと思っているヒトへ―知の毒

自分は死なないと思っているヒトへ―知の毒

  • 作者: 養老 孟司
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/12/10
  • メディア: 文庫


著者はベストセラーとなった「バカの壁」でも有名ですね。
なるほどなぁ、と納得させられる内容で、ウンウンと頷きながら読んでしまいました。

この本でキーワードとなるのが「都市化」という言葉。

著者はこう言っています。
<「戦後の日本」は何だったかというと、私は「急速な都市化の過程」であると定義します。(中略)つまり世の中が意識化した、ということです。これは「脳化」とも言えるのですが、人間は脳の世界、つまりはおとぎ話の世界をひたすらつくってきた。つまり人間の考えが及ぶものだけをつくった。>

「自然」は人の力でコントロール出来るものではない為、「都市化」の中で人間は徹底的に「自然」を排除してきました。ヒトによって設計され、ヒトによってつくられ、ヒトによって機能していく「意識化」された世界。全ては「ああすれば、こうなる」という約束事が成り立つ。だから「都市化」された世界では全てのことが誰かのせいなのです。(でも責任はとらんかったりするけどね・・・)

<都市の中では、すべてが人工物で、ありとあらゆるものが人間によって意図的につくられる。だから、そこでは仕方がないというセリフが成り立ちません>
<仕方がないという言葉は、自然の災害などにあったときに最終的にいう言葉になりました。>

都市の住人が「仕方がない」というセリフを使うのは、誰かに対して抗しきれずあきらめる場合であって、やはりそこには原因となる「誰か」が必ずいるように思います。

「少子化」についても、その一因となる内容を著者は述べています。
<子どもを持ちたくないという人が増えている。なぜ持ちたくないかというと、子供はコントロールできないからです。働いているお母さんが、明日会社で大事な会議があってどうしても出なければならないというときに、子どもは勝手に麻疹になる。お母さんは困ってしまい、こんなことなら子どもなんか持たないほうがいいと考えるようになります。>
<ですから、都市化が進むと当然のことながら出生率が下がります。すなわち自然の価値が下がるのです。>

仕事だから仕方がない、と子どもとの関わりをなおざりにしている人が結構いるのではないでしょうか?
「仕方がない」のは子どものほうで、「仕事」というのは所詮人間が作り出したもの。
でもやっぱりコントロール出来る方を優先してしまう。思い通りにならないコトはやりたくない。

<現代人、都会人の大きな特徴は、どんなことでも自分の思い通りになる世界をつくろうとすることです。(中略)都市的なセンスというのは、すべて自分の思い通りになる世界をつくろうとする感覚だということです。>

現代人の抱える精神的な病の多くもこんなところに原因があるのかもしれないな、と思いました。


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arukakat

おお、いいこと言いますなぁ・・。
そして、いいタイトル。やはりある程度自然と共にくらさなアカンでしょう!
by arukakat (2007-06-28 20:38) 

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